東京地方裁判所 昭和28年(ワ)1607号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔事実〕原告は、被告会社東京事務所々長八名英夫は原告を受取人として金額六十万円の約束手形一通を振出した。被告会社は本店を名古屋市において石炭販売業を営む会社で、東京事務所においては一定の範囲で本店と独立して石炭の販売をなしているからね実質的には被告会社の支店と認めるべきで、商法第四十二条によれば支店の営業の主任者たることを示すべき名称を附したる使用人はその営業に関する一切の裁判外の行為につきその支店の支配人と同一の権限を有するものと看做されるのであつて営業に関し手形行為をなす権限を有すると云うべきであるから被告会社東京事務所々長である八名英夫は被告会社の支配人と同一の権限を有し営業のため手形行為をなす権限があると主張した。被告は、被告会社東京事務所は被告会社の支店ではなく、事京事務所々長八名英夫には手形を振出す権限は与えられていなかつたと抗争した。
〔判断〕原告勝訴。
判決は、証拠によつて、被告会社東京事務所が本件手形振出当時支店と同一視しうる実体を有していたことを認定したうえ、つぎのとおり判示した。曰く。
「ところで、商法第四十二条によれば支店の営業の主任者たることを示すべき名称を附した使用人はその支店の支配人と同一の権限を有するものと看做され、その営業に関する一切の裁判外の行為をなす権限があつたものとされるが、手形行為はその性質上一般に会社が営業に関しなしうべき行為であると解すべきであるからそのような表見支配人が営業に関し手形行為をなす権限があつたと看做されることはいうまでもない。而して東京事務所の所長なる名称が主任者の名称であること明かであるから被告会社東京事務所々長である八名英夫がその資格でなした手形振出行為は被告会社の支店の支配人がなしたものとしてその効果は被告会社に帰属することになるといわなければならない。」